『ハイスコアガール』の最新コミックス第9巻が発売されましたのでレビューなどを。
ハルオが自分の本当の気持ちに気づき、二人の仲はこれまでにないくらい進展しますが、大野さんが思いつめた表情をしていた理由が判明し、大野さんとハルオの間に最大の障害が立ち塞がります。
押切蓮介(著)『ハイスコアガール』 第9巻
第9巻では第52~57話までを収録。
表紙は大野さん。前回までと同様、こちらが普通の表紙で、上の画像はカバー裏となります。
ハルオの本当の気持ち
これまで大野さんに対して抱いてきた感情を思い起こすハルオ。
ゲームが自分よりもうまくていけ好かない同級生というのが大半だったのですが、それがそのうちライバル視するようになり、大野さんのことで泣いたり怒ったりするなど、いつの間にか心の中で大野さんの存在が大きくなっていたことを感じます。
そんな時、街中をバイクで走ると至る所に大野さんとの思い出があることに気づき、大野さんと一緒にいるときが一番楽しかったことを実感するハルオ。
宮尾に相談すると自分の気持ちを確信したのか、一人の男として大野さんが好きだと告白します。
ついに大野さんを好きだと認めたハルオ。周りの連中はとっくに気づいていたのに本人だけがわからない状態がずっと続いていましたから、これは大きな進歩と言えるでしょう。
しかし、これまで思春期らしいものがなかったハルオは、自分の気持ちに気づいたところで次に何をすればいいのかわからないと言います。それでもゲームでの決着だけはハッキリつけなくてはというハルオ。彼にとっては大野さんとの関係は、異性という前にまずライバルであるということでしょうか。
決戦の地は大阪
大野さんとの決着には、うってつけの舞台がありました。それは大阪で開催される「スーパーストリートファイターⅡX」の全国大会。これに出て大野さんに勝利したうえで優勝し、告白しようというのです。
以前も大阪の大会で戦ったことがあるハルオと大野さんでしたが、その時は大野さんの筐体のボタンがほとんどきかないハンデありの状態でしたから、それのリベンジマッチという意味でも丁度良いでしょう。
これを(姉の真を通して)知った大野さんも、口には出しませんが雌雄を決すべきと感じたようで大阪行きに同意したようです。
もちろん大阪には泊りがけになりますから大野さんが行くのは色々厳しいと思ったのですが、意外にもお目付け役の萌美先生はアッサリと承諾。これにはある事情がありました。
それは、大野さんがもうすぐ両親が待つアメリカに行く事が決定しているためでした。
当然これを止めることは萌美先生にはできませんから、せめてもの心遣いとして大阪行きを黙認してくれたのでした。最初のころは一番の難敵だった萌美先生でしたが、今となっては大野さんたちの心強い味方となってくれています。
これで晴れて大阪行きが決定した大野さん。ハルオと一緒に大阪に向かいますが、大野さん自身もアメリカ行きは止められないことをわかっていますから、この大会でハルオに勝てば気持ちに整理をつけてアメリカに行く決意を(おそらくは)しているようです。
大阪での決戦は、ハルオが勝てば告白、負ければ大野さんとは決別という非常に厳しい戦いになりそうです。
大阪(デート)を満喫する二人
厳しい戦いになるだろう大阪に無事着いたハルオと大野さん。しかし、大会は明日ということで、今日一日は地元のゲーセン巡りというデートを楽しみます。
最初は格ゲーばかりでしたが、大野さんが強すぎてハルオでも相手になりません。地元のプレイヤーもまったく歯が立たず、大野さんの強さは健在でした。これにハルオが勝つイメージがまったく浮かびませんね。
そういえば二人がいった1ゲーム10円でできるゲーセンが登場していましたが、自分も何となくですが昔こんなゲーセンがあった記憶があります。安いかわりにダメージ量がMAXになっていて、普通のルールに飽きたプレイヤーが結構やっていた覚えがあります(自分はやらなかったけど)。
それはともかく、現地でのゲーセンを楽しんだ二人は、夜になるとホテルに泊まります。
さすがに同じ部屋ではありませんでしたが、なぜか大野さんの部屋に飾ってあった額縁の裏に魔よけのお札が貼ってあったことから怖がる大野さん。怖がる大野さん・怒る大野さん、みな可愛いです。
怖がる大野さんを一人にはできず、一緒のベッドで寝ることになってしまったハルオ。こちらをジッとみる大野さんに”お前は本当ににかわいいな・・・”と、つい本音を言ってしまいました。
その後もハルオをくすぐったり噛んだりと、ベッドの中で甘える大野さんが可愛すぎます。
大野さん的にはアメリカ行きが決まってますから、ハルオに甘える最後の機会ということなんでしょうか。
まさかの展開
そして、いよいよ迎えた大会当日。大野さんが甘えてきたせいでほとんど寝られなかったハルオですが、ここが長年の決着の場ということで己を奮い立たせます。
大会実況者にも存在は認知されているようで割と注目されているっぽいハルオですが、何度か危ないところはありましたが順当に勝ちを重ねていきます。
そして、大野さんの様子を見ようとトーナメント表を確認すると、そこには驚愕の結果が・・・
なんと大野さんは一回戦で敗退していました。格ゲーでは無類の強さを誇り、前日のゲーセン巡りでもその強さは健在だっただけにこの結果はあまりにも意外すぎて読んだときはリアルで「えっ?」と声を出してしまいました。
次の展開が非常に気になるところで10巻は終わりですが、次巻が最終巻とのことで二度ビックリです。
最終巻の発売は今冬とのこと。
感想
ハルオが大野さんへの気持ちをハッキリと自覚したのには、作中の宮尾たちではないですが本当に長かったなと思いました。
同時に、宮尾を含めた周りの人間が、あくまで本人が自覚するまではとハルオをずっと見守ってきたのも良かったです。
そして、甘える大野さんがとにかく可愛いすぎです。一言も喋らないのにこの可愛さは反則級ですよ。
日高も良いヒロインですが、それとはまったく違った良さがあって本当に甲乙つけがたいです。
その日高ですが、この巻では一切登場しません。唯一、日高の家を大野さんが訪れる描写があっただけですが、ここでどういったやり取りがあったかは不明です。
大野さん自身はこの時点でアメリカ行きを知っていましたから、自分は居なくなるからハルオを頼むというようなやりとりでもしたのかもしれません。いずれにしても、次巻でわかるでしょう。
そしてラストシーンの大野さんの敗退と次巻最終巻の衝撃には、冗談抜きでしばらく呆然としてしまいました。
敗退の直接描写がないのでわかりませんが、不戦敗だったのかそれとも対戦で本当に負けてしまったのか、どちらにせよ大野さんに勝って告白するつもりだったハルオはそれができなくなってしまいました。
ここからどうやって告白につなげるのか、非常に気になります。
コミックス第1巻では大野さんがアメリカに行くのを止めることができなかったハルオですから、同じような結末にならないように大野さんにもハルオにも幸せなラストになってもらいたいです。
あと、SNK絡みの小ネタがあってちょっと笑ってしまいました。大阪といえばSNK本社ですよね。
それと待望のアニメが7月からスタートします。アニメ化決定は2013年でしたから、実に5年も待ちました。
待望のアニメ化ですが、ほぼ無口な大野さんの心情を表すのにマンガではかなり工夫して描かれていたので、そういった部分がちゃんとアニメでも表現されるのか不安です。
たとえば原作のこのシーン。ハルオと大野さんがゲーセンで一緒に遊んでいます。
ハルオは大野さんのストレス解消になればと思い自宅に誘うのですが、その直前、大野さんは喋りませんが手元が描かれたコマでそれを期待しているのがわかります。
マンガではこういった丁寧な描写の積み重ねで大野さんの心情を想像しやすかったのですが、媒体がまったく異なるアニメでそれをうまく表現できるのか楽しみでもあり不安でもあります。
アニメも完走したいと思っているので、ぜひともがんばっていただきたいです。