(引用:熊之股鍵次(著)『魔王城でおやすみ』1巻 表紙 小学館発行)
熊之股鍵次(著)『魔王城でおやすみ』 第1巻
少年サンデーで今年から連載が始まった、熊之股鍵次先生による『魔王城でおやすみ』の第1巻が発売されたので買ってきました。
物語は、魔王が人間の姫(スヤリス姫)をさらって人質にし、人の世界の支配を目論むというもの。
主人公はさらわれたスヤリス姫のほうで、囚われた魔王城で寝る以外やることがない姫が、安眠を求めて魔物を狩ったりレアアイテムを盗んだりと好き勝手やるコメディーです。
作者の熊之股鍵次先生についてはあまり見ない名前だと思ったら、まだデビューしてそんなに時間が経っていないんですね。でも、絵がキレイで上手なので読みやすかったです。
特に第1話の見開きが好きで、本誌に掲載されたときは一見して引き込まれました。
表紙はヒロインのスヤリス姫と魔王城の魔物たち。
第1巻では第1~13話までを収録しております。
カバー裏には、主に表紙に登場した魔物たちの名前など。1巻だけあって色々な種類の魔物が登場しております。
主な登場人物たち
主人公のスヤリス姫は人類統一国家【カイミーン国】の姫で本名はオーロラ・栖夜・リース・カイミーンというのですが、人々からはスヤリス姫と呼ばれているそうです。
こちらがスヤリス姫。
若そうですが年齢は不詳、国にいたときには公務をしていたとのことですので、そこまでは幼くないのでしょう。
魔王城では人質のため待遇は良く、魔物たちも手出しをしてこないので基本的に寝る以外にすることがありません。
が、その寝るという点についてだけは不満があり、様々な理由で安眠できない魔王城での生活を改善しようと日々奮闘します。
続いてイマイチ出番の無い勇者アカツキ。
魔王にさらわれた姫を救出するため、魔王城を目指しております。
どうやら過去に実績があるらしく、カイミーン王国からの信頼も厚いそうです。
肝心の姫には会ったことはあるはずなのに覚えてもらえないという不遇の勇者。1巻での登場シーンはあまりありませんが、今後活躍するんでしょうか。
こちらは悪の親玉にしてスヤリス姫をさらった張本人・魔王。
人間界の権力を手にし、世界を支配することが目的で、そのためにカイミーン王国の姫をさらってきました。
ツノが生えていたりといかにも魔王な外見ですが、いつもはゲームバランスを気にしているらしく、姫救出のために魔王城へと向かう勇者がちゃんと来れるのか、事あるごとに様子を見に行ったりしています。
主要な人物は以上の3人ですが、他に登場シーンが多いキャラといえば、悪魔教会を仕切る「あくましゅうどうし」。
死んだ者を魔法で蘇らせることができるので、魔王城を徘徊していて死亡する姫をよく蘇生させたりしています。
こちらは「でびあくま」。くまの魔物ですが、見た目通りの癒やし系魔物で姫のペットにもなっています。
姫が囚われている牢屋のカギを管理しているのですが、姫に言われるとカギをすぐに渡してしまうので、姫が魔王城を徘徊する一番の原因となっております。
安眠を得るため奮闘する姫
魔王城での人質生活では、寝る以外にすることのないスヤリス姫。
しかし、魔王城で与えられた寝具は当然安っぽいものばかりで、これまで安眠できた試しがありません。
そこで魔王城にあるもので安眠グッズをつくることにしたスヤリス姫ですが、けっこうエグいことをしています。
まずは枕。ふわふわの枕を作ろうと食事を運んでくる「でびあくま」の毛をいただくのですが、ブラッシングで入手しているのでこれだけは平和的です。
続いてシーツ。これは「おばけふろしき」を(頭と手を残して)ハサミで切断して入手。
そしてベッド作り。これには勇者が魔王城に来るのに必要な「風使いの盾」をぶっ壊して作ります。
最後は虫刺され防止のための蚊帳。これには「おばけふろしき」よりも大きい「かいぶつふろしき」を刻んで作ります。
他にも「あくましゅうどうし」のツノを削ったり、「タイヤ魔神」を「でびあくま」の集団に襲わせたり、メタモスライムを壁に思い切り投げつけて瀕死に追い込んだりと、魔物以上に魔物っぽいことをするスヤリス姫。
安眠を得るために魔王城をアグレッシブに動き回る姫のせいで、魔王城にいる魔物たちが犠牲になっていく様が笑えます。
あと、意外だったのは裁縫が得意そうなところ。魔物から入手したアイテムを使って、うまく寝具を揃えていきます。
手先も器用そうですので、今後も寝具以外の道具を作ったりしそうです。
ただ、寝るための道具は上記で一通り揃ってしまいましたし、今後の展開をどう持って行くのかは気になりますね。
死んでも一応蘇る姫
さて、舞台になっているのは魔王城ですので、当然トラップや危険がいっぱいあります。
いくら姫でも生身の人間ですから、それらにハマれば当然タダでは済みません。
実際、魔王城を徘徊しているときにうっかり足をすべらせてマグマに落ち死んでしまいます。
他にも毒キノコの上で寝ていたらその胞子で死んだり、サンダードラゴンの電撃で肩こりを直そうとしたら電撃が強力すぎて死んでしまったりもします。
そんなわけで週一で死んでしまう姫ですが、そのたびに「あくましゅうどうし」が蘇らせてくれるので、姫もその辺り開き直っているふしがあります。
が、あまりにも死にすぎて、今度死んだら一週間放置すると言われてしまいます。
そうするとゾンビになってしまうという姫ですが、これってゾンビになったらずっとそのままなんでしょうか?
コメディーマンガですからそこまでシリアスでもないでしょうが、いっそのことゾンビになって安眠を求めるスヤリス姫というのも見てみたい気もします。
スヤリス姫以外の人々
さて、本編には基本的に魔王城を徘徊する姫の姿ばかりが描かれているのですが、それ以外の人物が他で何をしているのかもちょっとだけ登場します。
まずは勇者アカツキ。姫を助けに魔王城を目指しています。
ちょっとずつ魔王城に近づいているようですが、どのくらいまで来ているかは不明。
ただ、魔王にアドバイスを貰う反面、姫には間接的に旅を妨害されるという、普通とはおよそ真逆の展開をしながらの旅ですから、はたして城にたどり着くのはいつになることやら。
一方、こちらは魔王。城に向かう勇者にヒントやアイテムを与えたりと、ゲームマスターみたいなことをして勇者を導いています。
最終的には世界を支配することが目的の魔王ですが、退屈しのぎに姫をさらって楽しんでいるようにも見えますね。この辺り、配下の魔物たちがどう考えているのかちょっと気になります。
あと、所々パロディっぽいシーンがありますね。『クロックタワー』に登場するシザーマンとか、ビアンカとフローラとか。
ちょっと笑ったのは『名探偵コナン』に出てくる真犯人シルエット。笑顔でポーズを決めているところが良いです。
感想
勇者と魔王モノというのは近年ではラノベ辺りでやり尽くされた感があったのですが、さらわれた姫が安眠を得るために奮闘するというのは斬新で面白かったです。それに最初にも書きましたが、絵柄も緩い作風に合っていて非常に好みです。
最近はサンデーで読むものはあまり無かったのですが、これと『古見さんは、コミュ症です』は毎週楽しみにしている作品です。
『だがしかし』のように早期のアニメ化も期待しているので、ぜひこのまま売れて欲しい作品です。
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