『機動戦士ガンダム サンダーボルト』 第11巻が発売されたので買ってきました。オビによれば250万部突破したそうで、近年のガンダム関連コミカライズではもっとも成功しているのではないでしょうか。
ストーリー展開は少しスローペースですが、11巻ではいよいよダリルがサイコ・ザクに再び乗ることとなります。
太田垣康男(著)『機動戦士ガンダム サンダーボルト』 第11巻
第11巻では第89話~97話までを収録。
海上都市リグに潜入していたダリル小隊は、サイコ・ザクのパイロット集めをしていた南洋同盟の情報を入手します。が、そこへ連邦の強襲揚陸艦・スパルタンが現れ、ダリルたちは命からがらリグを脱出、そのとき捕虜にしたクローディアとともに海底要塞ドロスへと逃げ込みますが、脱出を支援したカウフマン少佐もまた南洋同盟の信者であり、ダリルにジオンを裏切り、自分たちの仲間になるよう迫るのでした。
表紙は量産型のサイコ・ザク製造ライン。南洋同盟の秘密基地で32機が製造されております。
裏切りのダリル
クローディアやカウフマンの説得によりジオンを裏切ることを決めたダリル。もっとも一番の要因は、直接レヴァン・フウの力に触れたことと、レヴァン・フウならカーラを治せると知ったことでしょう。
クローディアやカウフマン、それにほかの南洋同盟の信者たちとともにドロスを出るダリル。もちろんカーラも一緒です。
追手の追撃を最小限にするためドロスに破壊工作することも忘れない用意周到ぶり。これまで仲間だった連中を躊躇なく殺していくダリルたちの姿は、とてもヒーローには見えませんね。
ところでダリル小隊のほかのメンバーはどうしたかというと、セバスチャンとビリーは結局ダリルと行動をともにすることに。この二人はニュータイプの力に特別な思い入れがあるからでしょうが、ビリーについてはダリルの裏切りに反発していたので敵対するかもと思っていましたから少々意外でした。
ジャニスとペトロはダリルと行動をともにすることはなくここでお別れ。果たしてジオン軍に戻るのか気になりますが、ジャニスはビリーとちょっといい感じになっていたので残念です。
再会
ドロスから出たダリル達が向かったのは、南洋同盟最大の基地である火山基地。ここは連邦・ジオンともに掴んでいないらしく、南洋同盟の要と言っても過言ではありません。
そこで再会したのが、サンダーボルト宙域でカーラと一緒にリビングデット師団に来ていたJ・J・セクストン。
壊滅した師団からなんとか脱出していたセクストンはその後、宇宙に漂流しているところを南洋同盟に救われ、彼がサイコ・ザクのデータを持っていたために、南洋同盟がサイコ・ザクを作るキッカケになりました。
セクストンは宇宙漂流の影響で、以前の知的ぶった態度からベラベラと余計なことをしゃべるウザいキャラに変っていましたが、このくらいのほうが個性的でいいですね。もっともダリルとカーラには嫌われているようで笑いましたが。
彼に案内されてダリルたちが向かったのが、サイコ・ザクの製造ライン。そこではなんと32機ものサイコ・ザクが製造されていたのでした。今回の表紙にもなっているシーンです。
四肢を失ったパイロット候補を探していたので量産していることはわかっていましたが、まさかここまでの数を作っているとは意外でした。
そして、そこへ現れたのが数々の奇跡を起こしたニュータイプであり南洋同盟トップのレヴァン・フウ僧正。ニュータイプ能力もさることながら、圧倒的なカリスマ性でたちまちビリーやセバスチャンを熱心な信者へと変えたようです。
そういえばダリルはサイコ・ザクとは久々の再会ですね。コミックス3巻で乗っていたのがずいぶん前に感じます。
カーラの変化
ところで、リユース・P・デバイスとサイコ・ザクの量産化はセクストンのデータからできているのに、なぜカーラが必要なのかといえば、サイコ・ザクとの同調には発明者であるカーラの調整が不可欠だからだそうです。
そのためには幼児化したカーラを治さなくてはならず、パパと慕われたダリルも複雑な心境。しかし、最後には元のカーラに会いたいということで承諾し、レヴァン・フウの力でカーラは以前のカーラへと戻りました。
その後、ダリルと再会し、愛を確かめ合った二人。改めてレヴァン・フウへ協力することになったのですが、どうも以前と比べてカーラの様子がおかしいです。
ダリル以外のパイロットとリユース・P・デバイスの同調率を上げるため、増幅器や投薬を行うようセクストンに指示するカーラ。以前のカーラはダリルの四肢を切断する際にも涙を流していたのですが、そのためらいというか良心が表情から感じられません。
果たして、本当に以前の彼女と同じなのか、単に吹っ切れただけなのか、それともレヴァン・フウに何かされているのか、とても気になります。
サイコ・ザクの圧倒的な戦闘力
話しは前後しますが、ダリルが南洋同盟に入ったことで、さっそくサイコ・ザクの戦闘データ収集の模擬戦が行われました。
相手はビリー・セバスチャン・カウフマンという強敵たち。対するダリルは、サイコ・ザクとはいえ、装甲すらない試作機です。しかも3対1ですから勝ち目はあっても苦戦するだろうと思いました。
ところが、模擬戦が始まってみるとサイコ・ザクの圧倒的な性能に、3人がなすすべなくあっという間にやられてしまいました。
とにかく運動能力が段違いで、動きがとてもモビルスーツとは思えません。というか、以前イオが戦った時よりも強く見えます。
それは相手がガンダムだったからなのかもしれませんが、とにかくビリーたちではまったく歯が立たないのは事実です。こんなのが量産されたら、連邦といえども相当な脅威でしょうね。
レヴァン・フウの目的
模擬戦でビリーたちを圧倒したダリル。しかし、その圧倒的な力ゆえに戦いや破壊を楽しんでいるかのような様子があり、レヴァン・フウに諫められます。
そして、カーラとの絆を確かめ合ったのちに迷いが消えたダリルは、レヴァン・フウを信じることを決意。その言葉を聞いたレヴァン・フウは、自身の目的をダリルに伝えるのでした。
それは、人類史上最大の軍産複合体となったアナハイム・エレクトロニクス社を世界から消し去ること。そのために32機のサイコ・ザクを宇宙にあげ、サイド3の32基あるコロニーを制圧してソーラ・レイ・システムを入手し、これをもってアナハイムを攻撃するというものでした。
アナハイムは1年戦争から現在まで様々な兵器を開発し、人類の多くを失ってもまだ己の強欲を満たすために戦争を誘発しようとしているというのが理由だそうですが、まさか連邦やジオンではなく、巨大とはいえ一企業を潰すことが目的とは予想外でした。
でも、アナハイムを叩いたあとはどうするんでしょうか。戦争を引き起こすものを消し去るのであれば、やはり連邦もジオンもレヴァン・フウにとっては敵だということになるでしょうが、それだと南洋同盟の信者以外はすべて敵、なんていう解釈もできそうです。
今のところ、聖人のように描かれているレヴァン・フウですが、本当にその通りの人物なのか、まだ不明なところが多い人物だけに不安です。
感想
ようやくサイコ・ザクに乗ることができたダリル。コミックス3巻以来ですから、とても長い道のりでしたね。
地上で戦うサイコ・ザクは圧倒的な性能でしたが、ダリル以外に乗るパイロットもこのくらい強くなるんでしょうか。もしそうだったら、イオ以外にサイコ・ザクに勝てそうなパイロットがいなさそうですし、こんなのが32機もいたら連邦そのものを壊滅させることも夢ではない気もします。
しかし、連邦のスパルタン側も火山基地の情報は掴んでいるわけで、いつ攻めてきてもおかしくはない状況です。量産が完成される前に多くを破壊されるなんて事態もありえるので、まだまだ先は読めないです。
コミックス12巻は7月発売予定となっております。
※最新コミックス第12巻が発売されました。
