『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の最新コミックス第12巻のレビュー記事。
サイコザクの製造場所を突き止めたスパルタンが、南洋同盟の秘密基地・タール火山基地に向かい、決戦の火ぶたが切って落とされます。
太田垣康男(著)『機動戦士ガンダム サンダーボルト』 第12巻
「ビッグコミックスペリオール」で連載中の『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の最新コミックス第12巻のレビュー記事。
第11巻で再びサイコザクに乗り込んだダリル。一方、連邦軍はサイコザクの製造工場が、南洋同盟のタール火山基地にあることを突き止めます。
第12巻ではタール火山基地での決戦に備えたイオ・ダリル双方の陣営の模様が描かれます。
前巻の第11巻は以下の記事を参考にしてください。

第12巻では98~105話までを収録。記念すべき100話は全ページフルカラーでの収録となっております。
前回はほぼダリル側の視点で話しが進みましたが、今回は決戦前の準備描写がほとんどということで、イオ・ダリル双方の様子が描かれております。
表紙はサンダーボルト宙域で猛威を振るったビッグガンを構えるサイコザク。装甲が付いていない状態ですが、地上用に調整されたダリル専用機です。
中表紙はアトラスガンダム。精悍な顔つき。
決戦準備
サイコザクの製造工場が南洋同盟のタール火山基地にあると踏んだ連邦軍のスパルタンは、大規模な戦闘になることを予想してペカンバル基地にて補給や整備を受けます。
ペガサス級の強襲揚陸艦であるスパルタンの補給物資はハンパな量ではないらしく、基地内にある食料や武器弾薬の在庫ほぼすべてをかき集めながらの準備となりました。
そんな中、イオは一緒にチームを組むことになるビアンカ・マーカス・オルフェ・デントたちとお揃いのタトゥーを体に入れて、パイロット同士の絆を深めたりしていました。
これを見る限り、イオがスパルタンに来た当初のトゲトゲしい印象はまったく無くなっており、幾度の戦闘や訓練を通じて命を賭けて一緒に戦う仲間になったようです。
一方のダリルたち。こちらもビリーやセバスチャン、クローディアたちと一緒にお風呂に入って親交を深めておりました。
ダリルたちも、これまでは様々な意図があったためかチームではあっても信頼関係は薄い感じでしたが、レヴァン・フウの元に集まったことで結束できたようです。
イオたちもダリルたちも決戦が近いことは肌で感じており、それもあってか余計に仲間との結束を大事にしているようでした。
連邦軍初の強化人間
サイコザクが製造されているタール火山基地は非常に入り組んだ秘密基地のため、ここの内部構造を知ることがスパルタンの作戦成功へのカギとなります。
そこでモニカ参謀は「セイレーンの魔女」と呼ばれるシリェーナ姉妹をスパルタンに呼び寄せます。彼女たちはモニカ参謀の研究施設から派遣された強化人間で、透視とテレパス能力を持つ連邦軍初の強化人間とのこと。
妹のイース・シリェーナが電源と増幅器であり、姉リリー・シリェーナが透視と送受信機の役割を果たすようで、彼女たちの能力でタール火山基地内部を透視して内部構造を解析、サイコザクの確保・および基地制圧をするつもりのようです。
また、シリェーナ姉妹は意図した映像を受像機となりえる特定の個人に送ることができるようで、入り組んだタール火山基地内部の深部でも通信がある程度可能になるようです。
しかし、シリェーナ姉妹の能力には欠点があり、イースが2時間おきに覚醒と睡眠を繰り返す体質のため、イースが起きている時にしかその能力が使えないようです。よってタール火山基地の内部構造把握はまだ完成ではなく、基地制圧作戦のほうが先に始まってしまう模様。
とはいえ、基地内部を知る方法はこれしかありませんから、侵攻部隊はそうとうな犠牲を覚悟しなければならないでしょう。
なお、シリェーナ姉妹からイオだけが、あるメッセージを受け取ります。それは、サイコザクの開発者で「怪物の母」と呼ばれているカーラ・ミッチャム教授の殺害でした。
彼女は連邦軍でも最重要人物とされていますが、今回の作戦でもその殺害までは含まれておりません。しかも、どうやらイオには個人的に頼んでいるようで、上司のモニカ参謀も知らない可能性もありますから、そこまでしてどうしてシリェーナ姉妹がカーラ殺害を希望しているのか、この時点では謎のままです。
コーネリアスの役割
今回ほとんど出番がなかったコーネリアスですが、レヴァン・フウのスパイだった彼は、スパルタンの出航と同時に艦から脱出しようとします。が、それをレヴァン・フウが止めたようで、どうやら最後までスパルタンに乗り込むことになったらしい。
イオたちを最後まで見届けることになったと言うコーネリアスですが、彼はアトラスガンダムやイオに一番近い人間ですから、もしかしたらレヴァン・フウが切り札として残したのかもしれませんね。
なお、今回のレヴァン・フウからコーネリアスへの指令は、シリェーナ姉妹が人物までは特定していませんが感知したようです。もう一度同じことがあれば特定できると言っていますから、イオ達がコーネリアスの正体に気づくのもそう遠いことではないかもしれません。
戦いが始まる
修理と補給が終わったスパルタンは、南洋同盟のタール火山基地に向け出航。まもなくタール火山基地上空までたどり着きますが、もはや敵同士なのは明らかというわけで警告も空しく即、戦闘状態となります。
しかし、戦闘開始でいきなりスパルタンは地上から狙撃を受けます。さらに先に揚陸艇で出撃していたイオたちMS部隊も狙撃を受け墜落。揚陸艇を破棄して湖の中に落とされてしまいます。
これは南洋同盟が部品を回収して再度組み立てた、ダリルのビッグガンによるもの。
この狙撃により、イオやスパルタンの面々はダリルがここにいることを確信します。また、ダリルも墜落する揚陸艇からアトラスガンダムが脱出したのを見て、イオと再び戦うことになることを知ります。
ビッグガンを何とかしないと基地に近づくこともできない連邦軍ですが、イオやビアンカとはぐれてしまったデント・マーカス・オルフェの3人が、背負ったアトラスガンダムの武装からレールガンを使用して、サイコザクとビッグガンを狙い撃ちます。
重量級のアトラスガンダムの武装は量産機にはキツかったのか、さすがにサイコザク自体を倒せはしませんでしたが、ビッグガンの破壊には成功。これで島へ近づくことが可能になりました。もっとも、軽装とはいえ島にはサイコザクがいますから、上陸は簡単ではないでしょうが。
因縁の対決へ
一方湖の中に落とされ、基地の迎撃部隊と戦闘を繰り広げるイオですが、さすがに相手の数が多く、基地の入口も不明なため手こずります。
そこへシリェーナ姉妹が基地への入口となる水路の映像を送ってきます。これで進む道がわかったイオはビアンカとともに基地を目指すことに。
ダリルと再び戦うことに興奮するイオですがそれはダリルも同じようで、サンダーボルト宙域以来となる二人の闘いが始まります。
感想
以上、12巻の紹介でした。
タール火山基地での決戦前準備がほとんどでしたが、現時点でのイオやダリルたちの人間関係がわかる重要な描写が数多くありましたから、基地での戦いがより楽しみになったと思います。イオとダリルの闘いも非常に楽しみです。
ただ、残念なのはイオはアトラスガンダムですが、ダリルのサイコザクは調整がされているとはいえ、武装がヒートホークしか無い貧弱な状態であるということ。サンダーボルト宙域での、お互いが死力を尽くして戦うといった場面はなさそうです。
もともと南洋同盟側は、宇宙に32機のサイコザクを上げるまでこの基地を守ればいいだけですから、イオとダリルの決着もここでは付かないでしょう。その上でどこまで面白いシーンを見せてもらえるか期待しております。
あとはアニメのほうの展開も楽しみです。マンガ版に比べるとアニメは進行が速いですがクオリティは高いので、ぜひ最後まで映像化してもらいたいですね。
次巻は2019年1月発売予定となっております。